この記事では、環境計量士試験の過去問について、問題文・解答・解説を掲載しています。
過去問のPDFは、経済産業省などの公式ページで公開されている資料をもとに確認し、学習しやすいように1問ずつ解説しています。
なお、問題文の表記はできるだけ原文に沿っていますが、学習しやすさを重視して一部レイアウトを整えている場合があります。
正確な出題内容を確認したい場合は、公式に公開されているPDFもあわせて確認してください。
環境計量士 第76回 環濃 問題3
問 3 ガスクロマトグラフ用カラムの理論段相当高さに影響するパラメーターとして、誤っているものを一つ選べ。
1 カラムの内径
2 充てん剤粒子の粒径
3 固定相膜厚
4 キャリヤーガスの線速度
5 注入口温度
解答(全員正解になった理由)
「誤っているものを一つ選べ」となっていますが、選択肢の多く、場合によっては全部が理論段相当高さに影響し得るからです。
理論段相当高さとは
理論段相当高さは、カラム効率を表す指標で、一般に HETP とも呼ばれます。H=NL
ここで、
- H:理論段相当高さ
- L:カラム長さ
- N:理論段数
です。
H が小さいほど、カラム効率がよいことを意味します。
また、理論段相当高さは、ガスクロマトグラフィーでは主に以下のような要因に影響されます。H=A+uB+Cu
これは van Deemter 式として知られており、
- A:多流路拡散
- B/u:縦方向拡散
- Cu:物質移動抵抗
を表します。
各選択肢の確認
1 カラムの内径
カラムの内径は、カラム内での流れ方や拡散、壁面の影響などに関係します。
特にキャピラリーカラムでは、内径が小さいほど分離効率が高くなりやすく、理論段相当高さにも影響します。
したがって、影響するパラメーターと考えられます。
2 充てん剤粒子の粒径
充てんカラムでは、充てん剤粒子の粒径が小さいほど、物質移動距離が短くなり、カラム効率がよくなりやすいです。
また、多流路拡散にも関係します。
したがって、これは明らかに 理論段相当高さに影響するパラメーターです。
3 固定相膜厚
固定相膜厚は、固定相内での物質移動抵抗に関係します。
膜が厚いと、成分が固定相内を移動する距離が長くなり、ピークが広がりやすくなります。
したがって、理論段相当高さに影響します。
4 キャリヤーガスの線速度
キャリヤーガスの線速度は、van Deemter 式に直接出てくる重要なパラメーターです。
線速度が遅すぎると縦方向拡散の影響が大きくなり、速すぎると物質移動抵抗の影響が大きくなります。
したがって、これは 理論段相当高さに大きく影響するパラメーターです。
5 注入口温度
ここが一番「誤り」として狙われた可能性があります。
ただし、注入口温度も試料の気化状態や導入状態に影響します。
注入口温度が不適切だと、試料が十分に気化しなかったり、導入時にピークが広がったりする可能性があります。
厳密には、カラム内部の理論段相当高さそのものを決める代表的なパラメーターというより、試料導入条件としてピーク形状や見かけの分離効率に影響する条件です。
そのため、試験問題としては「5 注入口温度」を誤りにしたかった可能性があります。
なぜ全員正解になったのか
おそらく理由は、5を誤りと断定しにくいからです。
この問題では「理論段相当高さに影響するパラメーター」と書かれていますが、どこまでを「影響する」とみなすかが曖昧です。
本来、理論段相当高さに直接関係する代表的なものは、
- 充てん剤粒子の粒径
- 固定相膜厚
- キャリヤーガスの線速度
- カラム内径
- 拡散係数
- 温度
- 固定相・移動相間の物質移動
などです。
一方で、注入口温度はカラム内の分離過程そのものというより、試料導入時の条件です。
そのため、出題者は 5を誤り と想定していた可能性があります。
しかし、注入口温度もピーク幅や見かけの効率に影響し得るため、完全に「誤っている」とは言い切りにくいです。

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